ねどこのそばに、りんごと、コップに入れたジュースと、キャラメル三こ、おいてやりました。
この家では、夜ねるときに、だれでもこれだけのものをもらうんです。
『ムーミン谷の仲間たち』の中の「目にみえない子」の中の一部
おばさんからいじめられて姿をなくしたニンニがムーミン屋敷に迎えられた夜のこと
ムーミンママがニンニを空いていた東側の屋根裏部屋に案内して、寝床をこしらえてくれた場面
私はこの場面に本当に深い愛情を感じた
ムーミンの原作小説には色々考えさせられる場面があるんだけど、中でも印象強くて、不意に頭で繰り返されるのがこのニンニの話
ムーミンママってほんとに愛情深い
でも完璧でもなくて、他の話では心を病んでしまうような一面もあった
強いけど、弱い
弱いけど、揺るがない優しさが満ちてる
今日来たばかりの、傷付いて姿をなくした子にも、自分をさらけ出せない子にも、家族や他のみんなと同じ安らぎの場所と甘いお菓子の優しさで包んでくれる
特別でもなく、腫れ物扱いでもなく、同じ優しさ
ニンニだけでなく、きっと子どもじゃないムーミンパパも同じだけもらってる
いつも、寝るときにかけられる愛情
初めて読んだ時、ちょっと泣きそうになった
羨ましいというより、なんだかこの世界を覗き込んでるのが嬉しくて
優しい世界が好きだ
見つけた優しい世界だ
屋根裏部屋の、静かなベッドの中で、ニンニはどれだけ安心したことだろう
たまに想像する
夜、ベッドの中で
特にこんな寒い冬の日々に
目を瞑って、その脇のテーブルにりんごとジュースとキャラメル3個を感じてみる
歯も磨いたし、夜中には何も食べないんだけど
無意味なそれを想像すると、でもやはり、幸せな気分になる
屋根裏ではない、屋根裏部屋で
寝入るまでのほんのひととき、幸せになる
例えばこんなことで少し、生きるのに息吐ける夜もある
誰のもとにもあるといいのに
りんごと、コップに入れたジュースと、キャラメル3こ
優しい寝床の隣にあるといいな